母が入居しているグループホームに訪れたときの事です。グループホームとは、認知症の症状を持っていて、病気や障害で生活に困難を抱えた高齢者が、専門スタッフの援助を受けながら共同生活する介護福祉施設です。母の部屋に入ると、施設の人がやってきて、ご家族の方に、無料で本を配布しているのでよかったら、と、本を渡してくれました。タイトルは「めでたいご臨終」。えっ。と思いました。母の認知症は進み、脳は萎縮して、会話もままならない状態で、数年前には、何時亡くなっても分かりませんと言われたくらいなのですから。人によっては縁起でもない。と思う人もいるかもしれませんが、あえて、この本をくれたのは、覚悟しておいてくださいという意味がこもっているのではないかと感じました。縁起とかではなく、もう現実として直視しなければならないことなのでしょうか。本の著者は在宅医療に携わった医師で、末期がんの患者に在宅医療で緩和ケアを行い、実際にしあわせな死を見てきた事が書いてありました。緩和ケアは、延命するための抗がん剤などは使わず、痛みや苦しみを和らげながら生活することを主にした医療です。本の中で、患者の容態が悪くなったときの注意事項で、救急車は呼ばないでくださいという記載がありました。救急車を呼ぶと最悪の事態が起きるというのです。それは、延命処置が施される事だというのです。常識的に考えて、延命処置をするのが当たり前で、それは望むべき事だと思うのですが、余命が無い患者にとって、延命処置はただ、苦しむだけの時間だと言うのです。でも確かにその通りなのかもしれません。なんとも複雑な気持ちです。